角形の置き行灯を修理しました。
今回紹介するのは、写真の右側に写っている赤色の角形置き行灯です。
先日紹介した灯籠と並べて甲冑喫茶室に置いたところ、大変釣り合いが良く、どちらも魅力的な灯明です。
入荷した時には、障子紙は剥がれていましたが、部品が大体揃って原形を止(とど)めていました。
しかし、釘が殆ど錆びて劣化しており、運ぶ度に木枠が外れてバラバラになり唖然としました。
その為、錆びた釘が全く役に立っていなかったので、新たに細いドリルで釘穴を開けてからボンドを付けて補強し、木材が裂けないように釘で固定しました。
これは、上下開閉する前側部分ですが、この木枠もバラバラになってしまい修復するのに手間が掛かりました。そして、修理した後、内側に障子紙を貼りました。
引き出しのツマミのみが欠損していたので、針金で何とか代替えしました。
左右と後ろの枠には、外側から障子紙を貼りました。
この角形置き行灯は、江戸時代から明治時代にかけて使われましたが、当庵が所有するこの行灯には年号が記載されていません。
しかし、釘等の自然劣化を見る限り、大分古い行灯と思われ、この様に古い行灯が、ほぼ完全な姿に修復できたのは嬉しい限りです。
当庵2階には、灯明具コーナーがありますが、半数以上が欠損しており、いつか補修したいと考えています。
左から二つ目は「有明行灯」で、障子紙を貼れば完品です。
右端の障子紙を貼った円筒状の行灯は「遠州行灯」ですが、底の裏側に文化15年の墨書きが残っています。
有明行灯の後ろに置かれているのは、ロウソク式の「六角行灯」で、ロウソクの台が上下する珍しい灯明で保存状態が良好です。
この六角行灯には思い出が有ります。
以前、ブログでも紹介した牛馬兼用大型荷車を頂いた地元農家を紹介して下さった古物商の老夫婦のお爺さんから頂いた物です。
その老夫婦が我家を訪れた折り、ご自宅を聞いていたので、その後、訪問したところ家には古物品が沢山置いてありました。その時、この六角行灯が目に止まり、欲しかったのですが、値段が高くて買えませんでした。
しかし、その後、何年か経ってから、その古物商のお爺さんから電話があり「もう年で仕事を続けられなくなったので古物品を片付けており、アンタが欲しがっていた例の行灯を安く譲りたいが、貰ってくれないか?」との事でした。私は、すっかり忘れていましたが、大変気に入った珍しい行灯だったので、直ぐに出向いて購入致しました。
その時の高齢で弱々しいお爺さんの面影が、今でも思い出されます。
貴重な資料は、文化を愛する人によって大切に保管され、今日まで継承されてきました。
当庵で所蔵する「昔の生活資料」も、何時の日か、愛着ある人へ引き継がれ、「文化の証」として有用に活用されることを願っています。
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