古民具の紹介(酒樽)

今回、昔の酒樽を簡単に紹介いたします。


1 角樽(つのだる)

この酒樽を角樽(つのだる)と云います。

 樽の上に2本の大きな角の様な柄がついた黒や朱塗りの酒樽で、柄樽(えだる)、塗り樽、柳樽などとも呼ばれます。

 祝い事(婚礼・結納・誕生・新築・開店・長寿の祝い・公演)など慶事全般に、酒を入れて贈るのに使われました。

 今でも、木製で漆塗りの物やプラスチック製の物が製造され、贈答品やお土産として販売されています。


(1)焦げ茶色の角樽

 この酒樽は、柄の内側に酒屋らしき屋号紋が書かれ、全体の色合いが焦茶色です。

 (サイズ)

  角先までの高さ 51センチ

  樽の高さ 22センチ

  樽の直径 22センチ


(2)黒色の角樽

 この酒樽は、見たところ古そうですが、時代は明治の物です。

 樽底に「明治14年3月」の年号や桶工の名前等が書かれています。

 (サイズ)

  角先までの高さ 37.5センチ

  樽の高さ 14センチ

  樽の直径 24.5センチ


2 指樽(さしだる)

この酒樽は、指樽(さしだる)と云います。

 形は箱形の長方形で、表面は漆塗りで黒地に縁が朱色です。

 この2つの指樽は、大小似たような種類ですが、良く見れば所々が異なり夫婦一対ではないと思います。

いずれも、家紋や記名は見当たりません。

 指樽は角樽よりも古く、室町時代以降に指物技術によって板で作られた箱形の酒樽です。

やはり、婚礼等の慶事に使用されました。

樽の上部に注ぎ口が1箇所ついています。

(1)大きい方のサイズ等

  箱の高さ 33センチ

  横幅   43センチ

  奥行き  13センチ

  左右9センチ凹んでいます。

(2)小さい方のサイズ等

  箱の高さ 30.75センチ

  横幅   40センチ

  奥行き  11.5センチ

  左右10.5センチ凹んでいます。

 箱のサイズに比べて容器の酒量が大分少ない為、量より華やかさを重視した慶事の古民具であると判断されます。

 この酒器は慶事の贈答品である為、漆が豪華に塗られている点が特徴です。


3 おわりに

 今回紹介した古民具は、誰しも「お酒を入れる樽」程度には判っている物です。

 しかし、「角樽」「指樽」と云う名称までは、殆どの方が知りません。

 古民具は、何となくそこに有るだけではなく、その道具の名称や時代背景を知ってこそ愛着が生まれます。

 昔の生活道具を見ると、技術の精巧さが随所に見られます。

 ここ懐古庵では、お客様がこれらの古民具に触れて何かを感じ、故人らの暮らしに思いを馳せて頂けたら幸いに存じます。 

             懐古庵主 





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