賢人 矛和は真の偉人である
(下田温泉)
1 はじめに
この「教訓の壁掛け」は、私が15年程前に下田のお土産店で買った物です。
そして、この教訓の内容については、正直ずっと得体が知れないままでした。
「賢人」(賢い人:偉人)とは、【矛和である】のを強調していますが、そもそも矛和(ほこわ)の意味すら判らず、色々調べて見ましたが、「矛和」という熟語や故事ことわざは存在しませんでした。
なお、矛(ほこ)は、「両刃の剣」を意味する漢字で、「矛盾」という熟語に使われています。
それは、昔、中国の韓非子(かんぴし)に出てくる物語で、楚(そ)国で矛(ほこ)と盾(たて)を売る者の「つじつまの合わない故事」から生まれた熟語です。
「矛和(ほこわ)」について考えれば考える程、益々泥沼に迷い込んでしまいました。
2 賢人とは
・聖人に次ぐ徳のある人。
・かしこい人、知恵・行いの優れている人、賢明な人。
・判断力に優れ、その行為が道理に叶って、世間から仰がれる人。
「賢人」たる意味は誰でも承知しています。
しかし、賢人を目指すのに何が大切なのか?
下田で購入した壁掛けは、やはり「矛和」を強調しているようです。
3 この様な名言が、有るものなのか?
「矛和は真の偉人である」
この壁掛けを買った店が何処だったのか、記憶にはありません。
この教えは、製作者が考えたものなのか?
誰の教えなのかも記されてはおらず、ネットで色々検索して見ましたが、該当する名言は見付かりませんでした。
4 「矛和」に或る漢字を想定してみました。
私は「矛和」に当てはまる、或る漢字を確信していました。
そして、その漢字を当てはめると、非常に素晴らしい教えに成るのに関心していました。
そこで、この壁掛けを妻に見せ、「意味が判るかどうか?」尋ねてみることにしました。
すると、いとも簡単に、
「柔和(にゅうわ)は真の偉人である」
と読んだのです。
私は驚いて、
「矛和をどうして柔和と読んだの?」
と聞いたところ、妻は「矛」を「柔」と勘違いして読んだとの事でした。
後から「柔」が「矛」だと気付き、
「あれ!矛だったの?」と驚いていました。
妻は、その後、色々「矛和」について調べていましたが、やはり、私と同じ迷路に迷い込んでしまった様でした。
5 製作者の意図まで知るすべはなし
考えられるのは、
・「柔」を「矛」と間違えた可能性
・あえて「柔」を「矛」に略した可能性
等々ですが、穿鑿(せんさく)するのは止める事にし、秘められた思いが「柔和」に有るのだけは確かだと思いました。
「柔和(にゅうわ)は真の偉人である」
それは、誰かの名言なのか?
色々、名言検索してみましたが、該当する名言は見当らず、故事ことわざにも該当しませんでした。
6 やはり、類似する教えは存在した!
下田といえば、幕末に黒船が来航して、米国のペリー提督が開国を要求してきた事で有名です。
また、下田には、坂本龍馬や吉田松陰も所縁(ゆかり)が有ります。
〇「柔和」とは、
(人柄や態度が)
優しくて穏やかな様子
(同類語)
温順・温良・穏和・淳朴
〇「柔和な人」とは
(性格・態度・言動が)
優しくて穏やかで、
とげとげしい所のない
物柔らかな態度の人
ネット検索した結果、「柔和」には、武士道精神を世界に紹介した新渡戸稲造の教えがあるのに行き着きました。
著書「自警」では、
・「柔和なるものは幸いなり」(キリスト)
・「恭・謙・譲」の教え(孔子)
を引き合いに出して、聖人の教えに共通する
「柔和の徳」
を唱えています。
「柔和」とは、柔弱ではなく
尚武思想に裏付けられた「徳」
であるとも記しています。
よって、「柔和主義」は、全ての聖人が唱えた徳であり、
「柔和(にゅうわ)は真の偉人である」
との教えは、当然、誰にも当てはまる箴言であると解されます。
7 当庵が所蔵する新渡戸稲造の名著
「自警」(大正5年発行)
3版目「自警」
(初版から20日後に発行)
教育家・思想家である新渡戸稲造の「自警」では、ゲーテの言葉も引用されています。
また、ニーチェ・シェークスピア等の言葉を引用しつつ有用な道徳思想を展開(伝承)しています。
8 おわりに(最近の出来事から)
先日、量販店で買い物した帰り、私の車が走る対向車線側を、車間距離が1メートル位しか無い2台の車が近付いてきました。
2台の車間距離が無く、後方車両がピッタリ張り付いているので、私は直ぐに、後方の車が煽(あお)り運転の嫌がらせをしているのに気付きました。
いったい、どの様な人が嫌がらせをしているのか?確かめようと思い、後方車両が擦れ違った時に、運転手の顔を見たところ、30歳位・丸顔で、表情も普通のお嬢さんでした。
その時、その様なお嬢さんにも、
「心にイラツキのヤミがあるのかな?」
と思い、少し惨めな気持ちになってしまいました。
賢人とは、
「柔和(にゅうわ)な人」
だと思います。
それは、性格・態度・言動が、
・優しくて穏やかで、
・とげとげしい所のない
・物柔らかな態度の人
であり、最近の出来事から、少なくとも
・心にイラツキの有る人
・とげとげしい人
ではないと感じた次第です。
懐古庵主
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