「ファウスト」の石碑

 ゲーテ「ファウスト」、天上の聖なる隠者のことばより。

神よ、雑念を去らしめ、わが貧しき心を照らし給え。


ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

(1749年~1832年)

ドイツを代表する文豪。

 詩人・劇作家・小説家・自然科学者・政治家・法律家。

(石碑の紹介)

 今回、紹介する石碑は、当庵の南側の庭に配置しています。

 名言とは違い、ゲーテ畢生(ひっせい)の名作「ファウスト」のクライマックスから、昇天の場面の一節を石碑に刻みました。

(ゲーテと「ファウスト」について)

 私が人生の後半に差し掛かった頃、「座右の銘」(書籍)を枕元に置いて、夜更かししながら読み、人生の指針にしていました。

 すると、その名言の多くが、或る天才の独壇場である事に気付きました。

それがゲーテでした。

 それ以来、ゲーテの書籍は何冊も読み、言葉の要点をメモに残してきました。 

 ゲーテの名作「ファウスト」といえば、最後の二行、

「久遠の女性は、我らを高きに牽(ひ)き行く」

という言葉が有名で、「永遠の女性は、私達を高い場所に導いてくれる」との意味ですが、そこには深い意味が秘められています。

 数々の名言を残し、83歳で亡くなったゲーテが最期に述べた一言も有名です。

 寝室の肘掛椅子に腰掛けて空中に手をかざし、意識朦朧としている中で、召使いに窓を開けるよう命じた言葉が、

    「もっと光を!」  

であった と伝えられています。

 ゲーテという天才の前向きな最期を物語っています。

(石碑の一節について)

 ファウスト博士という天才が、悪魔の子に手を染めて悪行を重ねた挙げ句、この世を旅立つ時、純粋な心を持ち天国に召されていた かつての恋人(グレートヒェン)が、聖母のそばから祈りをささげ、それによってファウストの魂が救われる、というクライマックスの場面です。

 魂が昇天し、天上界へ召される途中、山峡で聖なる隠者「神父」・「天使」・「童子」達が現れ、様々な意味深く素敵な言葉を発します。

 今回紹介した石碑の言葉は、その中の一人「沈思する神父」が発した言葉からの一節を引用したものです。


神よ、雑念を去らしめ、わが貧しき心を照らし給え。


 この素敵な一節に魅力を感じ、石碑に刻んだ訳ですが、物語の流れや解説は難しく、全てを理解していた訳ではありません。

 解釈の仕方にも様々ありますから、昇天してゆく時に現れる隠者達が、ファウストの心を投影しているのかどうか?、そこまでも理解している訳ではありません。

 しかし、この言葉の一節には何か[不安や心配をはね除ける力]が有ります。

 とかく人生には、欲望・執着心・思い込み・礼儀知らず等々、自分でも気付かずにいる場合があります。

 自分の行動を絶えず反省し、行き詰まった時には、何故か、この言葉を念ずると強い気持ちになれる為、石碑に刻んであります。

※『神よ、雑念を去らしめ、わが貧しき心を照らし給え。』(沈思する神父)


(参考文献)新潮文庫、高橋義孝訳、ファウスト(一)・(二)


※当庵では、ゲーテの素晴らしい名言を何個か石碑にしています。以前、床の間に置いてあった「寸鉄の言」(板に刻んだもの)は、ゲーテ思想の奥義を要約したものです。

 愚生は、人類史上で最高の聖賢がゲーテであると疑わない者の一人です。





 


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