ゲーテ思想「寸鉄の言」

3つの要点「必然・分別・不実」。

 この画像は、以前、床の間に飾ってあった時のものです。


(はじめに)

 私は、6年前の平成27年、詩聖ゲーテが語った教えを人生の有用な生き方として、その言葉の要点を 碑文用文章「寸鉄の言」にまとめました。

 その内容は、主に著書「ゲーテ格言集」(新潮文庫)から引用し、ゲーテならではの鋭い指摘(寸鉄の言)を選んだものですが、ゲーテの著書では

    必然・分別・不実

という3つの語句(ワード)が繰り返し使われている要点であるのに気付きました。

 その3つの語句は、私自信が実社会の中で仕事を通して経験した

人生の生き方で大切な意味を持つもの

として実感した重要な要点でした。

 当時私は、人生の指針となる賢人が残した「座右の銘」を、碑文として石碑に刻む作業に没頭し、大方の石碑製作は終了していたところでしたが、

どうしても、このゲーテの大切な教えだけは人生の集大成として石碑に残しておきたい

と思っていました。

 ところが、これ程の長い碑文になると、私の力量では半年や1年が掛かると思い、石碑にするのを断念して木彫板に彫る事にしました。

 思案の末に木彫板へ彫った結果、製作期間が1ヶ月近く掛かり、平成29年5月、ようやく完成しました。

 よって、この碑文「寸鉄の言」は、私が名句碑作りの集大成として最も心血を注いだ作品になりました。

 懐古庵を開設した当初は、「寸鉄の言」の彫刻板を床の間に飾っていましたが、その後、床の間に雑兵甲冑を飾ったため、今では彫刻板をコミュニティースペースの北西角に掲示しています。

(碑文内容) 

    寸 鉄 の 言 

        正道を誠実に生きる

1、 大きな必然は人間を高め、

   小さな必然は人間を低くする。

   豊かさは節度の中にだけある。

  思慮を欠いた事をすれば、

    終始逃げ道を探す事になる。

  大きな思想と清い心こそ、

    我々が神に求めるものであり

  人間の誤ちを清い人間性が償う。

  法の力は強いが

       必然の力は更に強い。

  必然を高め分別を守る事が大切

  である。

  分別によって正道に戻り、無分別

  によって邪道に導かれる。

  分別のある人だけが正しい道を捉

  える事ができる。

  常識は人類の護り神である。

2、 不実に気付いて誠実な生き方を知

  る。

  他人との擦れ違いの原因は、分別

  の未熟さが引き起こす不実な行動

  即ち心の過ちにある。

  不実とは、誠実でない事、誠意や

  情愛に欠けている事の意。

  不実は、不誠実という様に積極的

  に悪く捉える意味ではないが、

  不作為により誠意や思いやりに欠

  けるという誠実ではない事 の意。

  この世は共生社会である。

  利己的行動を常に反省し、誠実に

  生きる事が大切である。

  不誠実には悪意がある。

  不実には悪意はないが誠意がない

  誠実とは、不実な行いを反省し、

  誠意と思いやりのある前向きな

  姿勢を意味する。

平成29年5月    一彦謹記 印

(寛容の心)江戸時代、大人の仕草の

  一つに「うかつ謝り」の精神あり


(内容説明)

必然について

 ※必ずそうなると分かりきっていること の意。


「大きな必然は人間を高め、小さな必然は人間を低くする。」

「法の力は強いが必然の力は更に強い。」云々

 ゲーテは法律以前に必然があると云います。

 ・嘘を付かない

 ・卑怯なことをしない  云々

 など法律に規制されてはいないが、

 この二つを守れば六法全書が要らなくなる必然です。

 ・高い所から飛び降りてはいけない

とも法律には書かれてはいませんが、

それは、法律以前に必然の問題です。

必然が守られず法律を免れても意味がない


分別(ふんべつ)について

 ※世事に関して、常識的で慎重な考慮・判断をすること。

 道理をわきまえていること。

 社会人としての理性的な判断 の意。


「思慮を欠いた事をすれば、終始逃げ道を探す事になる。」

「分別によって正道に戻り、無分別によって邪道に導かれる。」

「分別のある人だけが正しい道を捉える事ができる。」

 人は「正の学習」より、道理に反する都合の良し悪し「負の学習」によって行動しがちである。


不実について(不実とは?)

 ※誠意や情愛(情味)に欠けていること。

 誠実でないこと。親切気がないこと。

 真心に欠けていること の意。

 「誠実」の反意語。


 他人との擦れ違いの原因は、不実な行動(心の過ち)が引き起こす。

 不実とは、不誠実の様に積極的に悪く捉える意味ではないが、相手の心に寄り添わない不作為(行動の怠り)によって、

 誠意や思いやりが伝わらないこと

「不誠実」には悪意がある。

「不実」には悪意はないが誠意がない。

 とかく人は、不誠実でなければ誠実だと勘違いしがちである。

 不実に気付かず、自分では誠実だと思い違いしている人が多い。

 

※「誠実とは、不実な行いを反省し

  誠意と思いやりのある前向きな

  姿勢を意味する。」

 

 ゲーテは、必然・分別・不実という3つのワードを良く使っています。

 「寸鉄の言」の1項目は、その格言を組み合わせた教えです。

 必然・分別・不実という3要素が、人生の世事において絶えず重要な役割にあるのは確かです。


(おわりに)

 日々の暮らしの中で、古民家ギャラリー懐古庵は、私設資料館・貸し教室などを通じてノスタルジー(郷愁)の大切さを地域に於いて伝承しています。

ノスタルジー(郷愁)とは、

【忘れられない幸せな想い出や経験】に焦点を当てたポジティブな感傷であり、

 今を生きる喜びを感じさせることが出来る大切な精神的リソース(資産・資源・要素)

です。

 ノスタルジーが人生の色々な罠(トラップ)や誤謬(ごびゅう)(パラドクス)に打ち勝つことが出来るのは、

 ノスタルジーに浸(ひた)れば、純粋な頃の自分に立ち返り『自分には価値がある』と自信を持つのに必要なエビデンス(証拠・根拠・証言・形跡)思い出すことが出来る

からです。

 それによって、人は「今」を大切にし〈新しい未来〉を築くことが出来るのです。


 今回のブログでは、あえて難しい「ゲーテ思想」を取り上げました。

 古民家ギャラリー懐古庵では、施設が持つ理念を大切にしています。

 そして、その理念に対する挑戦をビジョンとしています。

 それが、当庵のオンリーワンだとも思っています。

 以前から私は、その理念を皆様に伝えて理解して頂く為には、

 ・石碑の紹介

 ・郷愁(ノスタルジー)の有用性

だけでは、不十分さを感じていました。

その為、前々からブログにて重要な二つ

 ・6月7日の「青い鳥」

 ・今回の「寸鉄の言」

だけは記事にしたい と考えていました。

 今回、その二つのテーマに踏み込んだ訳は、古民家ギャラリー懐古庵の理念をしっかり皆様に伝え、地元からの理解の下

・心に悩みのある方

・自分が何処に向かっているのかを見失ってしまった方

に対して、全面的に手を差し伸べて行きたいと考えている為です。 

 是非、色々な方々が当庵を訪れて楽しんで頂き、心に悩みのある方が、人生のトラップや誤謬に打ち勝つため、精神的リソース(資産的価値)を取り戻すのに必要な、エビデンス(証拠・根拠)を見付けられる施設となる様、努力して参りたいと考えています。


(名言)

  私は孤独ではない!

    リチャード・バード

   (南極探検家、吹雪の中でー)



※参考文献

 高橋健二 編訳、新潮文庫「ゲーテ格言集」








 

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