懐古庵の屋根裏てっぺん(棟木)には、大正11年5月10日の上棟式の記録(棟木銘)があり、古民家は今年の5月で丁度、築100年になりました。
1 棟木銘
この建物には通常の棟札とは違い、棟木(むなぎ)に上棟式の日にちを記した「棟木銘」という旧式の方法が使われています。
棟木銘には、
・上棟式が大正11年5月10日
・大工長(棟梁)が山本富士太郎
であった旨 記録されています。
棟梁について調べたところ、子孫の方に辿(たど)り着き、当時、原田小学校の向い側にあった山本建設(経営者)が建てたことが判明しました。
郷土資料を少し調べたところ、山本建設はその後、原田小学校の改築工事にも携わっている様でした。
2 上棟式で使われた神具
【幣束(へいそく)3本立て】
幣束とは、上棟式にお供えする「神霊が宿る物」を云います。
懐古庵では、写真の「3本立て幣束」が、屋根裏の梁(はり)に不安定な状態で置かれていました。
屋根裏の守り神とは云え、大地震の時に落下すれば天井板を突き破る畏れがあった為、2階農具置き場に移動させてあります。
3 明治中期(築約130年)の物置
物置は、懐古庵よりも古い明治中期以前の建築物で、今では周囲にその頃の建造物は見当たりません。
しかも特徴的なのは、横8軒の平屋を道具部屋・米倉・隠居部屋の3室に仕切っており、物置と蔵を兼ね備えた珍しい建物である点です。
現在、その「西の間」が古民家ギャラリー懐古庵の「骨董展示場」になっています。
付近は人や車の通行量が少ないため、展示場の表側を賑やかにして通行人からの目を引く様にしています。
時々、古い物に興味のある方が覗いて下さいます。
4 おわりに
建物を100年余り維持することは、簡単ではありません。
古い物には、汚い・危険などのリスクが伴います。
しかし、人として最も重要な「文化の継承」という「引継ぐ価値」が存在します。
例えば「株とは何か?」といえば、「引継ぐ価値」に他なりません。
確かに古民家の管理は大変ですが、歴史的価値を継承するのも仕事だと考えています。
「祝100年」の古民家には、長い歳月を乗り越えて来た威風堂々とした雄々しさが感じられます。
懐古庵主
(追記)
私は何でも古いものが好きだ。
古い友、古い時代、古い風習、古い本、古い葡萄酒。
ゴールドスミス
いつも変らなくてこそ、ほんとうの愛だ。
一切を与えられても、一切を拒まれても、変らなくてこそ。
ゲーテ
※参考文献
東海ブックス
(株)ティーケイ出版発行
「座右の銘」
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