今回のブログでは、当庵「古民家」の建物について紹介いたします。
この建物の建築年月日は、通常の棟札という形で記録されておらず、屋根のてっぺんの棟木(むなぎ)に、上棟式の日に記録された旧式の方法「棟木銘」という形で記されています。其処には、上棟式が大正11年5月10日、大工長(棟梁)が山本富士太郎であったと書かれています。当時、祖先の旧宅は向かい側でしたが、屋敷のこの場所に新たに此の大きな住宅を建設しました。その時の戸主は、製紙業界の黎明期の明治45年3月、芦川万次郎氏が創業した手漉工場「岳南製紙」に出資した実業家でもありました。
時代が変わり、周囲の状況は様変わりしましたが、大正年間を代表する此の大きな建物だけ地元に残ったのは奇跡に近い事だと思います。
2005(平成17)年6月上旬、私も会員なっている「静岡民家の会」の方々の多大な協力を得て耐震補強を行いました。屋根瓦は小判瓦で味わいがありましたが、頭の重量を軽くする為に10トン位の瓦を下ろして瓦棒式のトタン屋根に変え、屋根裏と床下に耐震金具で補強を施してあります。その時、親戚から無償のボランティアも参加して下さいました。
しかし、古民家を維持するのは簡単な事ではありません。定年退職後にも仕事をしており、今年の3月一杯で無事、第二の職場も退職して本事業に専念した訳ですが、仕事の傍ら屋根裏の掃除や各所の修理に約1年7ヶ月を費やしました。その間、何度も断念する事を考えましたが、ようやく開業にこぎ着ける事ができた次第です。
今では、長年の夢だった「古民家ギャラリー懐古庵」で、妻と一緒に老後の貴重な時間を楽しく共有できて本当に充実した日々を過ごしています。
私達、老夫婦にとって、一人でも多くのお客様が訪れて下さるのが楽しみでなりません。
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